展覧会情報

(展覧会名)

 「この道はいつか来た道」展

  ー山中現と渡邊加奈子のメルヘン版画ー

(会期)

  2021年10月2日(土)〜 2021年11月28日(日)

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展示室の様子はコチラからご覧ください。

【現在開催中の展覧会】
 高畠華宵没後55年記念特別展
「この道はいつか来た道」展
 ー山中現と渡邊加奈子のメルヘン版画ー

私は前にもこんな景色を何処かで見た記憶がある。而も其れは一度ではなく、何度も何度も見たのである。或は、自分が此の世に生れる以前の事だったかも知れない。前世の記憶が、今の私に蘇生って来るのかも知れない。其れとも亦、実際の世界でではなく、夢の中で見たのだろうか。(谷崎潤一郎『母を恋うる記』(大正8年)より)

 

空はどんよりとした深い雲に覆われ、月あかりもないある日の夜、しかし不思議と明るい、幻のような「何か、人間の世を離れた、遥かな遥かな無窮の国を想わせるような明るさ」の中、幼い少年・潤一は一筋の街道を歩き始めます。海の浪の音、松風の音、えたいの知れない音、古沼の蓮のカサカサという音に耳をすましながら、電信柱の数を数えながら、潤一はあてもなく歩き続けます。途中で出会った母と思しき女は母ではなく、いつしか道は砂地になり、松林をぬけて、銀光のような冷たい青白い月に照らされた、眼前にひろがる海の景色を見た潤一のつぶやきが、冒頭の一文です。

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 どこかで見た風景の中で潤一は、三味線を奏でる女と出逢います。美しい月夜に涙を流すその女は潤一の母でした。母の乳房の匂いに抱かれ涙する潤一は、枕を濡らしながら目覚め、34歳の潤一は、母が一昨年に亡くなっていたことを思うのです。

 現代版画家の山中現と渡邊加奈子の作品世界には、ここではないどこかにありそうな、ぼんやりとした不思議な記憶の風景、懐かしいような、寂しいような、少し悲しいような、そんな景色が広がっています。柔らかくシンプルな形が紡ぎ出す山中の作品は、私たちの心象風景とリンクしていきます。

一方、モノクロのヴェールに包まれた渡邊の作品には、日本の重苦しい因習の中でひっそりと息づいている、大人には見えない童女の戯れのようなシーンがしばしば描かれますが、それが私たちの遥かな記憶を呼び覚まします。

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メルヘンとは昔の人々の体験や記憶が、想像の力でよみがえり、語り継がれてきたたものです。メルヘンは美しさと醜さを内包しますが、遠い世界の物語を受け継ぐことで、人々は想像力という生命の糧を得てきました。今、現代の私たちに最も欠如しているのが想像力であり、最も必要とされているのも想像力の力がではないでしょうか。

 

この道はいつか来た道・・・・。

山中現と渡邊加奈子の作品世界は、高畠華宵が生きた大正時代の道を経て、人々の心の奥深くに眠る、遠いメルヘンの世界へと私たちを誘います。日常の喧騒から離れて、二人の作品世界の中で想像力の翼を羽ばたかせてください。

この道はいつか来た道・・・・。

 

本展が、コロナ禍で失われそうになっている

大切な何かとの出会いの場になれば幸いです。

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(展覧会情報)

【展覧会名】

 「この道はいつか来た道」展

  ー山中現と渡邊加奈子のメルヘン版画ー

【会期】2021年10月2日(土)〜11月28日(日)

【開館日】毎週土・日曜日

【入館料】一般600円/中高大生500円

     障害者手帳をお持ちの方500円

     65歳以上の高齢者500円

【開館時間】11:00〜17:00(入館締め切りは30分前)

【お問い合わせ】高畠華宵大正ロマン館

        Phone:089-964-7077

        E-mail:kasho@almond.ocn.ne.jp